整形外科治療

動きや姿勢を改善します

脳性まひの症状として痙縮や不随意運動があります。

  • 痙縮(痙性)…余分な力が入るために分離した運動(膝だけを曲げ伸ばしする、指を一本一本動かすなど)がしにくくなる状態です。
  • 不随意運動…自分の意志によらないで身体が勝手に動いたり緊張してしまったりすることです。

これらのために立つ・歩く・走るなどの運動が妨げられます。

さらに、脳性まひの二次障害として股関節脱臼や尖足などの手足の変形、脊柱側弯、頚椎症性脊髄症が引き起こされることがあり、多くの場合に痛みが出てきます。

整形外科ではこれらの症状に対して、手術をはじめとする様々な治療を用い、動きや姿勢を改善し、痛みをやわらげます。

 

手術

痙縮を緩めたり、二次的な変形・拘縮を軽減したりするために行います。手術の目的は大きく2つに分かれます。

  1. 運動機能を高める(座る、立つ、歩くなどをしやすくする)こと
  2. 痛みや変形を軽減して生活をしやすくすること

もちろん、両方を目的にすることもあります。

運動機能を高める手術

代表的なものが、痙性両まひのお子さんに対する股関節周囲筋解離術、ハムストリング延長術です。

股関節のずれ(亜脱臼)を治すだけでなく、股関節や膝関節周囲の痙縮や筋・腱の短縮を軽減することによって、歩行機能を上げることができます。
その他にも、片まひの方の尖足に対する腱延長術などがあります。

いずれも手術だけではなく、その前後の集中的なリハビリテーションが機能の向上には不可欠です。
 

痛みや変形の軽減・予防

痛みや変形の軽減・予防を主な目的とするのは、股関節脱臼に対する大腿骨、骨盤の骨切り術や、脊柱側弯に対する椎体固定術です。

ご家族の中には「どうせ立ったり歩いたりできないのだから、負担になることはしたくない」と手術に消極的になる方がいらっしゃいます。しかし、股関節が脱臼しているといつかは痛みが出ます。側弯が重度になると内臓を圧迫して苦しい思いをします。

医療の進歩によって、重度の脳性まひの方の寿命はかなり延びています。
私たちは、痛みや苦しみを持ったまま長い人生を送るよりは、適切な時期に手術をして苦痛を予防する方が良いと考えています。

股関節脱臼

年少で股関節亜脱臼もほとんど目立たない間は、筋腱などの軟部組織解離術で股関節はよくなることが多いです。しかし、年長ではっきりと亜脱臼や脱臼がある場合には、筋腱だけではなく、大腿骨や骨盤の骨の形もできるだけ正常に近い形に直しておいたほうが、再び脱臼しにくい股関節を作ることができます。
お子様の重症度に関わらず、生涯、股関節に痛みがない状態で生活ができるように、積極的に治療しています。

側弯に対しては、必要に応じて体幹装具を調整しながら、悪化が進んだ場合は専門施設を紹介し、治療方針について相談しています。

 

手術だけではありません

痙縮に対しては、内服薬、ボツリヌス療法、髄腔内バクロフェン注入療法(ITB)、軟部組織解離術を症状に応じて使い分けます。

ボツリヌス療法

痙縮が強い筋肉にボツリヌストキシンを直接注射して緩める治療法です。私たちは2007年からボツリヌス治療を始め、最近では年間延べ150人の方に治療を行っています。

ピンポイントで目的の筋肉だけ緩められるのが利点ですが、逆にどの筋肉をどの程度緩めるのかが大切です。私たちは小児神経科医や療法士と十分に協議し、最も望ましい部位に必要十分な量を投与しています。

髄腔内バクロフェン注入療法

まだ日本では広まっていませんが、多くの国で痙縮の治療として採用されています。お腹に直径8cm程度のポンプを植え込み、そこから皮膚の下を通して脊髄の周りにある髄腔というところにチューブを通します。

ポンプからごく微量のバクロフェンという緊張を緩める薬を脊髄の周りに持続的にゆっくり注入します。バクロフェンは口から飲む場合もありますが、なかなか脊髄に届かないためこのような方法をとります。

主に下半身の緊張を緩めるために使われ、体外からリモコンで薬の速度を調節できるので、症状に応じて調整できるのが利点です。ポンプの大きさから、あまり小さなお子さんには用いられません。

 

装具

装具には変形した身体を矯正するだけでなく、手足を使いやすくしたり、成長に伴う変形を予防したりする役割があります。

他の治療と同じく、装具もその方の状態に合った(適合した)ものを使わなければ効果が得られません。
特にお子さんの場合は急激に身体が成長するため、定期的に修正を加えることが必要です。

技術の進歩に伴って、装具の形や材質も徐々に変化してきました。私たちは、常に新たな装具について学びながら、個々の患者さんの身体や生活様式に適合した装具を作り、細かな調整を繰り返して十分な効果が得られるようにしています。

 

お問い合わせ先

TEL

06-6962-3131(代)

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  1. ボバース記念病院
  2. 小児期発症の疾患に対する治療とリハビリテーション(脳性まひセンター)[2018年10月から]
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