2020年度 医療の質・治療実績

森之宮病院では、リハビリテーションに精通した医師、リハビリテーション看護に精通した看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、神経心理士等他職種が定期的に会議を開催し、各々の患者さんに共通の認識を持って治療しております。
2020年4月~2021年3月までに、当院でリハビリテーションを目的として森之宮病院に入院された成人の患者さんの治療実績についてご紹介します。

※ 整形外科のリハ入院を除きます。
※ これらのデータは、2020年度の入院患者さん全体の傾向です。すべての方が同様の経過をたどるわけではありませんので、ご了解ください。

 

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2020年度脳卒中のリハビリテーション成績

退院患者について

当院の回復期リハビリテーション病棟では、脳卒中及び頭部外傷の患者さんについては「発症後60日以内」が入院対象となっています。
2020年度の脳卒中リハビリテーション目的での入院患者は、合計440名(男性255名、女性185名)で、平均年齢は69.5±15.2歳でした。
発症時の年齢でみてみると、45歳以下:29名、46~60歳:93名、61~70歳:74名、71~80歳:126名、81歳以上:118名となっています(図1参照)。
疾患の内訳は、脳梗塞が258名、脳出血149名、クモ膜下出血33名でした(図2参照)。
 

  

 

リハビリの治療実績(全体評価)

患者さんの日常生活動作がどれくらい回復したかを評価する際、当院では、「FIM(フィム)(Functional Independence Measure)」と呼ばれる評価法を採用しています(附1~3参照)。
FIMは18項目の評価尺度で構成されています。食事や更衣、トイレ動作、整容等のセルフケア(日常生活動作)、椅子移乗や歩行、階段昇降等の移乗・移動動作に加え、コミュニケーションや社会交流等の認知面の評価を行う尺度もあります。各々の項目は1点~7点の7段階で採点します。
入退院時のFIMは、(1)総合計(126点満点)、(2)運動項目(91点満点)、(3)認知項目(35点満点)の3つに分けて評価を行います。
ここでは、2020年度の治療実績を上記の3つに分けて詳しくご紹介します。

1. 総合計

当院の患者さんの入退院時FIM評価について、総合計(126点満点)からまとめると、入院時:62.6±28.3点で、退院時:88.6±33.6点という結果になりました(図3参照)。入院時と退院時の平均値を比較すると、26.0点向上しています。
これを7段階評価に換算すると、入院時:平均3.5点から退院時:4.9点へと1.4点アップしたことになります。これは、入院時には軽い介助が必要だった方が、退院時には周囲で見守る(監視)だけの対応で過ごせるようになったということになります。


図3 総合計におけるFIM平均値の変化

2. 運動項目

運動項目(91点満点)をまとめると、入院時:42.5±21.7点から退院時:63.7±26.0点へと、平均値で21.2点アップしていました(図4参照)。
これを7段階評価に換算すると、入院時:3.3点、退院時:4.9点へと1.6点アップしたことになります。入院時には中等度~軽い介助が必要だった方が、退院時には周囲で見守る(監視)だけの対応で過ごせるようになったということになります。


図4 運動項目におけるFIM平均値の変化

3. 認知項目

認知項目(35点満点)から入退院時の評価を行った結果は、入院時:20.1±8.4点、退院時:24.9±8.7点でした(図5参照)。
これを7段階評価に換算すると、入院時:4.0点、退院時:5.0点となります。入院時に軽い介助を必要とされていた方が、退院時には見守り(監視)だけの対応で過ごせるようになったということになります。


図5 認知項目におけるFIM平均値の変化

4. 平均在院日数・自宅復帰率

発症から当院入院までの期間は34.1±18.3日、当院での平均在院日数は83.3±45.5日でした。 このうち、自宅退院が可能となったのは288名で、当院から直接自宅に戻られた方は全体の65.5%という結果になりました。 なお、居宅施設への退院などを含む「在宅復帰率」は、74.8%でした。

 

リハビリの治療実績(年齢別評価)

機能回復は、発症時の年齢によって差が出てきます。2020年度のデータを年齢別に分けて分析した結果をご紹介します。
ここでは、発症時の年齢を、A:45歳以下、B:46~60歳、C:61~70歳、D:71~80歳、E:81歳以上の5段階に分類しました(表1参照)。

 

表1 年齢別患者数と平均年齢

年齢区分

患者数(人数)
※男性/女性

平均年齢(歳)

45歳以下

29
※20/9

36.1

46~60歳

93
※65/28

53.3

61~70歳

74
※50/24

66.0

71~80歳

126
※73/53

79.6

81歳以上

118
※47/71

86.2

 

1. FIMの平均値

FIMの評価を年齢別にまとめたのが図6です。
退院時のFIMの総合計は、発症年齢が若い層ほど高く、年齢が高くなるにつれ低くなっています。入院時と退院時の平均値差(改善の度合い)も、年齢が高くなるほど減少する傾向にあります。
中でも、81歳以上における運動項目は、入退院時ともに他年齢群と比べて目立って平均値が低くなり、回復も良くない結果となりました。しかし、それでも退院時の運動項目を7段階評価に換算すると4.1点であり、平均して軽介助レベルでの退院が可能という結果になっています。
認知項目のFIMについても、同様に81歳以上では入退院時ともに低い数値になっています。しかし、運動項目と同様に7段階評価に換算すると、退院時の認知項目は4点で軽介助レベルで退院されています。

図6 年齢別FIM平均値の変化

 

2. 平均在院日数・自宅復帰率

年齢別に平均在院日数や自宅復帰率をまとめたのが図7です。全体では自宅復帰率は65.5%でした。
折線グラフに示した自宅復帰率は、45歳以下:82.8%、46~60歳:81.7%、61~70歳:74.3%と高率でした。しかし、71~80歳:63.5%と71歳以上にて急激に低下しました。80歳以上になると、介助者の高齢化も影響しているのか、自宅復帰率は44.9%でした。平均在院日数は各年齢層での目立った差を認めませんでした。

 

図7 年齢別在院日数と自宅復帰率

【附1】~【附3】

【附1】FIMの尺度

分野(項目数)

評価項目

セルフケア
(6 項目)

食事、整容、入浴、更衣(上半身)、更衣(下半身)、トイレ動作

排泄管理
(2 項目)

排尿、排便

移乗
(3 項目)

ベッド・いす・車いす、トイレ、風呂・シャワー

移動
(2 項目)

歩行・車いす、階段

コミュニケーション
(2 項目)

理解、表出

社会的認知
(3 項目)

社会的交流、問題解決、記憶

 

【附2】FIMの評価方法

(1)総項目:尺度全18項目の合計で採点。126点満点。
(2)運動項目:セルフケア、排泄管理、移乗、移動の13項目の合計で採点。91点満点。
(3)認知項目:コミュニケーションと社会的認知の5項目の合計で採点。35点満点。

 

【附3】FIMの7段階評価

点数

レベル

1点

全介助(2人の介助が必要)

2点

最大介助(介助者1人でも相当な介助が必要)

3点

中等度介助(介助者1人で部分的な介助が必要)

4点

最小介助(安全のために手を添えてもらう程度)

5点

監視または準備(直接の介助は必要ないが、監視や動作のための準備が必要)

6点

修正自立(補装具などを使用すれば自立できる)

7点

完全自立

 

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