ステントグラフト治療とは

局部麻酔と限定的な切開で施術できる身体への負担が非常に少ない治療法

ステントグラフト治療とは

ステントグラフト内挿術では、大動脈瘤の存在する部分に図1のようなカテーテルというストロー状の長い管を挿入します。カテーテルの中にバネ付きの人工血管を挿入し、動脈瘤部分でこのバネ付き人工血管をカテーテルから押し出して留置します。この人工血管をステントグラフトといいます。

大動脈瘤内で広がったステントグラフトは動脈瘤の前後を橋渡しする形となり、動脈瘤は血液の流れから完全に遮断されます。人工血管の外側にかさぶたがついて、動脈瘤が破裂しない状態となるわけです。

この方法は、太ももの付け根の部分に小さな切開(4~5cm)を入れるだけで治療ができ、他の部分は切開する必要がありません。麻酔も部分的にかける局所麻酔のみにて行うこともできますので、患者さんの体の負担は手術に比べて極めて低いという利点があります。ご高齢の方や体に弱点を持つ方にも受けていただきやすい治療といえます。

森之宮病院大動脈治療センターでは、大動脈瘤ならびに解離性大動脈瘤(大動脈解離)に対する治療を積極的に行っている全国的にも数少ない大動脈瘤の専門施設です。ステントグラフトと呼ばれる人工血管を使った体にやさしいカテーテル治療を数多く手がけています。

 

胸部大動脈瘤の治療例

治療前(ステントグラフト挿入前)

矢印の部分が胸部大動脈瘤。その大きさと形態で破裂の頻度が異なる

 

治療後(ステントグラフト挿入直後…大きなこぶがなくなっているのがわかる)

動脈内にカテーテルを用いてステントグラフトが留置された
点線の部分にあった大動脈瘤が見えなくなっている

 

対象疾患別のより詳しい情報はこちらからご覧ください

 

従来の治療法(人工血管置換術)との比較

 

ステントグラフト

従来の治療法
(人工血管置換術)

  • 体の負担が少ない(創が小さい)
  • 入院期間が短く社会復帰が早い
  • 高齢などの理由で手術のリスクが高い場合でも、比較的安全に治療できる
  • 死亡率、合併症発生率が低い
  • 長期成績が安定している
  • すべての場所の動脈瘤の治療ができる

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  • 動脈瘤を切りとるわけではないので追加治療が必要になる場合がある
  • 動脈瘤の場所により治療できないときがある
  • 長期の経過観察(外来通院)が必要である
  • 開腹や開胸が必要で体に負担がかかる
  • 入院期間が長い
  • 死亡率、合併症発生率が高い

 

当院の合併症予防

当院では合併症の予防にも積極的に取り組んでいます。合併症の一つにエンドリークがあります。ステントグラフト内挿後も瘤内に血液が入り込む状態をエンドリークと呼んでいます。

それぞれに分類があり、4種類のタイプに分かれます。

 

 

 

 

type Ⅰ:大動脈壁、腸骨動脈壁とステントグラフトの接合部分の密着が悪く、 同部分からの血液漏れで瘤内が染まること。

 

type Ⅱ:大動脈瘤の側枝(腰動脈、下腸間膜動脈、正中仙骨動脈等)から血液が逆流して瘤内へ流れ込むもの。

 

type Ⅲ:ステントグラフト-ステントグラフト間のコネクション部分からの瘤内への血液漏れ。

 

type Ⅳ:ステントグラフトのポロシィティー(人工血管基布にあいている小孔)からの血液漏れ:通常は抗凝血薬を止めればなくなるはずのエンドリーク。


これらのエンドリークは一般的にはステントグラフトを留置すると人間本来の止血機能にて消失する事が多いのですが、時には大動脈瘤の側枝(腰動脈、下腸間膜動脈、正中仙骨動脈等)から逆流し瘤が大きくなる事があります。

当院では、できるかぎりステントグラフトを留置する前に大動脈瘤の側枝(腰動脈、下腸間膜動脈、正中仙骨動脈等)の血管を塞栓し、瘤の拡大を防ぐ合併症予防に取り組んでいます。

 

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